イェール大学CFOに学ぶ投資哲学を後半のみ力を入れて読了。前半は読み飛ばし。著者は、イェール(エール)大学の年金運用担当者です。なんでも、長期間で見ると市場平均を上回るリターンを20年間以上たたき出しているとか、紹介によっては20年間で20倍! と、それって、アメリカのインフレ率を考慮してないんじゃあ、というような扇情的な文章で紹介されています。
もっとも正確であろう運用の結果は、
Stockpickr! Yale University Portfolio
http://stockpickr.com/port/Yale-University/
の右上のPortfolio description書かれています。長期間、確実なリターンを上げ、イェール大学の年金基金を120億ドルほど増やしたので、ウォール街の注目を集めたとあります。大学の年金運用はおおむね保守的な運用で、投資する資産としては国内公開株式、国内債券、現金に限られていたようなのですが、スウェンセンは、投資対象の資産を外国株式、未公開株式、不動産、ヘッジファンドなどに拡張、分散をはかってリターンをたかめたようです。国内債券、現金の比率が多いとインフレと年金支払いで確実に資産は目減りします。この二つを減らしただけでもすごいことです。
どの資産が大きなリターンをもたらしたのかの精査の部分は、まったく興味が無かったのですっとばしました。興味があったのは、公開市場で入手可能な資産に関する情報のみ、株式、投資信託、ETF、せいぜいクローズドエンドのファンドまでです。
スウェンセンの現在の株式のポートフォリオも上記サイトで公開されています。とくにバリュー、グロース、大型、小型のセクターに特化したものでなく、SPYやOEFなどの大型株式の市場平均に連動するETFにも手を出しています。一番大きい割合をしめているのは、モルガンスタンレーのクローズドエンドファンドで、ついでREITのAKR、これで25%以上を占めています。EWJというMSCI JAPANに連動するETFがポートフォリオに組み込まれていて少し驚きましたが、日本市場の時価総額からすると弱気の組み込み割合でもあります。しかし、銘柄入れ替えの多いMSCI JAPANを組入れているのは、著書の内容と一致しません。もっとも、日本株のADRで代用するには突っ込む資産額が大きすぎるのでしょう。配当も少ないし。
EWJ組入れ当時は、ラッセルノムラプライムジャパンに連動するETF JPPは未上場、WisdomTree Japan Total Dividend DXJも運用年数が短く出来高が少ないため不適だったと思われます。FDCが組入れにあるため、ジム・クレイマー(かつて、短期間のみ過半数株主)も興味を示しているようです。
投資する資産分野が分散され、一定割合は市場平均に連動させる、そして、重点投資する分野では個別銘柄で集中して投資しているのが高いリターンをもたらしたのかも知れません。あと、豊富な資金量で自分で提灯、吊り上げ大作戦。GCFBとかひでぇ(w 年金運用担当者が年金資金で仕手株かよ!
とまあ、色々と参考になりましたが、最終的には、自分で判断して投資する、投資家は個人、機関、運用規模を問わず証券会社とは利益相反することをしっかりと覚えておくというのがよく分かる名著でした。上記のスウェンセンが組んだポートフォリオも、証券会社の担当チームが言うであろう、なんとかポートフォリオ理論を鵜呑みにしていたのでは、絶対に構築できないものです。ましてや、運用を一任していたのでは、「リバランスしときましたー」などと勝手に売買を繰り返されて資産を減らすだけです。イェール大学CFOに学ぶ投資哲学は、2ch投資一般板でも、テンプレが機能していたころならテンプレ入りしたでしょう。テンプレ入りしないのが残念でなりません。